日本ライフ協会の破産
民事再生を申立てていた日本ライフ協会が結局破産となってしまいました。
このような制度は、本来であれば信託会社を使って倒産隔離をしておくべきお金だと思います。
一民間団体が「預かります」「保全します」と言っているだけだと、倒産したときに預託者は全く保護されません。
いつか消費者問題になるのではないかと心配していましたが、心配が実現してしまいました。
他にも似たような団体はありますが、本当に高齢者から預かったお金が保全されているのか心配になります。
最近では、葬儀社と信託会社が連携をして、葬儀費用の事前預かりを信託口で管理してもらえるというサービスも出てきています。
これであれば、万が一、葬儀社が倒産しても、預託金は戻ってくるので安心です。
借金を相続しない方法② ~免責的債務引受け
こんにちは。弁護士の武内優宏です。
今回は、前回に続き、借金を相続しない方法についてです。
相続放棄以外の方法としては、遺産分割のときに誰かが1人で借金を支払っていくことを決めた場合、債権者の承諾を取るという方法があります。
これを「免責的債務引受」といい、銀行と各相続人との間で合意を行うという方法です。
例えば、免責的債務引受を使って、銀行と合意をすれば、長男だけが銀行に対する借金を負い、他の相続人は銀行に対して、返済をする必要はなくなります。
遺産分割協議で借金の相続について合意するときには、事前に、合意内容について承諾をもらえるか銀行に問い合わせておく必要があります。
また、遺産分割協議後に、免責的債務引受の手続きがきちんと行われているか、確認することも極めて重要です。
この他にも、借金を相続しない方法はいくつかあります。
・借金を相続させたくない
・借金を相続したくない
という方は、お気軽に法律事務所アルシエンにご相談ください。
借金を相続しない方法① ~相続放棄
こんにちは。弁護士の武内優宏です。
今回は、借金を相続しない方法についてお話しします。
「遺産分割協議で遺産を放棄した」
「相続をしないと遺産分割協議で言った」
現実は、遺産分割協議でいくら「相続放棄をする」と言っても、実際は相続放棄にはなりません。
このケースだと、財産を相続せず、借金のみ相続しているという最悪の事態になりえます。
それでは、借金を相続しないためには、どのようにすればいいのでしょうか?
答えは、「相続放棄」です。
プラスの財産もマイナスの財産も、財産を相続しないのであれば、きちんと相続放棄手続きをしておくことが必要です。
マイナスの財産も含めて、相続を放棄するには、原則として、相続開始時から3カ月以内に裁判所に対して、相続放棄の申述をするという正規の手続きをすることが必要です。遺産分割協議書に「相続放棄する」とか「遺産は相続しない」とか記載しても、全く効力はありません。
ちなみに「相続放棄」の申請前や申請後に、被相続人の車の名義変更や、高額医療費の還付などの申請をして受給すると、「単純承認」をしたことになり、相続放棄ができなくなってしまう可能性があります。オーナー社長が亡くなって、社内の人から「新たな取締役の選任をするので、株主総会議事録に捺印してください」と言われても捺印してはいけません。株主の議決権行使は「単純承認」にあたり、相続放棄できなくなる可能性があります。
遺産に多額の債務があると分かった時点で「何をして、何をしてはいけないか」、弁護士に相談することをお勧めします。
法律事務所アルシエンでは相続放棄の事例も多く扱っていますので、お気軽にご相談ください。
アパート建築資金のための借入れがある相続②
こんにちは。弁護士の武内優宏です。
今回は、次回に引続き、アパートを建てた方の相続についてです。
なぜ、遺産分割でアパートを相続しなかった次男、三男も借金を払う必要があるのでしょうか。
理由は、次男も三男も借金を相続しているからです。長男が借金を支払わない場合、次男と三男は、銀行に対して借金を支払う必要が生じるのです。
このケースは、専門家でも勘違いしていることがあるので、一般の方が勘違いするのは当然かもしれません。
借金は、遺産分割に関係なく、法定相続分に従って相続をします。
例えば、父親に6000万円の借金があり、子供3人が相続人であれば、1人当たり2000万円の借金を相続したことになります。
たとえ遺産分割協議で、「長男が債務を支払う」と決めて、合意書を作成したところで、債権者である銀行に対抗することはできません。自分は500万円しか受け取っていないから、500万円の範囲でしか支払いたくないと言っても、認められる話ではありません。
このようなことが認められると、銀行の立場からすれば、「支払能力がない人に借金を押し付ける」という遺産分割をされてしまい、大損害です。
このように、遺産分割協議で、債務について、すべての相続人で誰が支払うか取り決めをしたとしても、それは相続人内部の問題であって、債権者には全く主張できないのです。
借金を相続したくない場合の対応については、次回お話しをいたします。
アパート建築資金のための借入れがある相続①
こんにちは。弁護士の武内優宏です。
最近、相続対策にアパートを建てないかという営業が流行っているそうです。
相続対策でアパートを建てた方の遺産分割で何が怖いかというと、借金は相続人の合意で分割できないことです。
例えば、アパートを経営していた父親が亡くなったとします。母親はすでに亡くなっていて、相続人は子供3人です。
長男は、アパートの管理に関わっていたので、アパートと、父親がアパート建設資金として銀行から借入した借金を相続しました。次男と三男は借金を相続しない代わりに、父親の預貯金を500万円ずつ相続することとしました。
兄弟は、この相続内容を、遺産分割協議書に明記しました。
そして、3年後、長男はアパート経営に失敗し、銀行への支払いができなくなりました。
さて、このような場合、次男と三男は銀行に対して借金を支払う必要があるのでしょうか?
長男はアパートと借金を相続し、次男と三男はそれを考慮して、相続財産を少なくしました。それについては、遺産分割書も作成しています。
一般的には、長男がアパートと借金を継いだのだから他の相続人が借金を支払う必要がないと考えると思います。
しかしながら、答えは、「長男同様、次男、三男も借金を支払う」です。
理由については、次回からお話ししていきます。
エンディングノートを親に書いてもらうには
「親にエンディングノートを書いてもらいたいけど切り出せない」「親にエンディングノートを渡したけど書いてもらえない」ということをよく聞きます。
縁起でもないと言われそう、相続財産を目当てにしていると思われそうなのでなかなか切り出せないという方も多いかと思います。
最近では、「終活」という言葉もだいぶ定着してきていますので、親に「終活」についての話題をふってみれば、意外にあっさりとエンディングノートを書いてくれるかもしれません。
ただ、エンディングノートを書いてみようと思ってみた方であればお分かりいただけると思いますが、いざエンディングノートを書こうとする、色々なことを考えてしまい筆が進まなくなるというのも実情です。
そのような場合、自分で親から色々と聞き取って、エンディングノートを書いてあげるということにトライしてみてはいかがでしょうか。
その際、いきなり本題に入るのではなく、まずは親子の会話から入っていった方がよいと思います。葬儀やお墓の情報だけでなく、いざ親と会話できなくなったら知ることができなってしまうという情報って意外とあるものです。
例えばですが、お母様から家庭料理のレシピを聞いておくということでも良いと思います。家庭の味を引き継ぎたいからとお願いをすればレシピを教えてくれるはずです。その他、両親の馴れ初め、戦争体験などでもよいと思います。
まずは、そのようなことから尋ね、親に自分の人生を振り返る機会を作ってもらいながら、徐々に、葬儀やお墓のことなどを聞いていけば、自然とエンディングノートの項目も埋めていけるのではないでしょうか。
エンディングノートは、自分で書かなければいけないというものではありません。みなさんがインタビューをしながら、一緒にエンディングノートを埋めていくというコミュニケーションツールとしても使えるのです。
エンディングノートは家族との架け橋
皆さまはエンディングノートというものをご存知でしょうか。自分が亡くなった後、遺族に伝えたいことをまとめておくノートのことをエンディングノートといいます。
最近、エンディングノートを購入する方が増えているようなのですが、残念ながら実際に書く人は少ないようです。
ただ、弁護士として相続手続をしていると、「あぁ、エンディングノートがあればなあ。」と思うことがあります。
例えばですが、おひとり暮らしの方ですと、故人がどのような財産をもっていたか遺族には分かりません。そのような場合、私も一生懸命財産調査をするのですが、相続手続が漏れてしまった財産もあるのではないかと思います。その点、エンディングノートに財産の内容が書いてあれば、相続手続が漏れてしまうことはありませんし、手続がスムーズに行えるので遺族も助かります。
また、何より怖いのは、故人が債務を負っていたことを知らずに、遺族が相続してしまう場合です。相続はプラスの財産だけでなくマイナスの財産も相続してしまうので、債務の存在については、必ず遺族に伝えておく必要があります。
このような相続手続以外にも、家訓や感謝の言葉、これまでの人生で楽しかったことなど家族に伝えたいことを記載する欄もあります。
エンディングノートを書くことは、自分の人生を振り返り、今後の人生をよりよく過ごしていただくためのきっかけにもなります。
是非、一度、エンディングノート作成にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
人が亡くなると忙しいという話②
人が亡くなると忙しいというお話の続きです。
人が亡くなると忙しいというのは、何も葬儀だけではありません。
何より怖いのは、故人が借金を負っていた場合です。
相続はプラスの財産だけでなくマイナスの財産も相続してしまいます。
故人の借金の方が多かった場合、うっかり相続をしてしまうと、親の借金のせいで破産をし、自宅を失ってしまったという事態になりかねません。
これは連帯保証債務なども同じですので、特に会社を経営している方は注意が必要です。
では、借金まみれの遺産を相続してしまわないためにはどうすればよいのでしょうか。
答えは相続放棄という手続をしておくことです。
相続放棄をすれば、借金まみれの遺産を相続しないで済みます。
しかし、相続放棄には期間制限があるのです。
その期間内に相続放棄をしなければ、単純承認と言って借金も含めて遺産を相続したことになってします。
その期間制限は、どのくらいかというと、たった3か月です。
3か月以内に、相続財産がプラスかマイナスかを見極め、相続するか、放棄するかを決めなければいけないのです。
※裁判所で手続をすれば3か月以上に延期することはできますが、
亡くなったあと、たった3か月で遺産の全容を調査するということは難しいですよね。
故人の財産を一から探すとなると、なかなか大変です。
遺産として何があるか、特に債務についてはどのくらいあるかについては、生前にきちんと整理しておいてもらわないと、残された遺族が大変な目にあってしまうことだってあるのです。
会社を経営しているなどで債務を抱えている方は、エンディングノートなどを活用して、自分の財産・債務がすぐに分かるように準備しておいた方がよいでしょう。
もし、よろしければ、私が監修したエンディングノートも出版されていますので、ご覧になってみてください。
もしもの時に安心!エンディングノート
人が亡くなると忙しいという話①
いきなりですが、皆さまは、お父さま、お母さまの交友関係って把握していますでしょうか。
ご両親と一緒に住んでいないと、昔の友人は知っていても現在の交友関係までは把握していないという方も多いかと思います。
なぜ、そのようなことをお尋ねするのか。
それは、万が一、今、お父さま、お母さまが亡くなった場合、どなたにお伝えすればよいのか判断する必要があるからです。
弁護士としておひとり様やそのご遺族のサポートをしていると、亡くなったことを誰に伝えればよいのか分からないということをよく耳にします。
葬儀は、通常、亡くなってから1週間以内には行いますよね。
ということは、亡くなったらすぐに死亡のお知らせをしなければ、葬儀には参列してもらえません。
そのためには、日頃から、親の交友関係を把握したり、親に、万が一の時には葬儀に誰を呼べばよいのか整理しておいてもらう必要があります。
エンディングノートを書いておくというのは一つの方法ですが、対策はそれ以外にもあります。
亡くなられた方のご自宅にあがらせていただき、最初に行うのは郵便物の探索です。
郵便物は、その人の交友関係や財産を探るとてもよい情報源になります。年賀状の整理だけでも、交友関係を探るとてもよいきっかけになります。
お一人暮らしの方は、年賀状の整理をするというあたりから「終活」を始めていただければと思います。
一番親しい人に損をさせるのが相続!?
あなたが亡くなったあと、葬儀の喪主になってくれるのはどなたでしょうか。その葬儀費用は誰が負担するのでしょうか。
ご存知のとおり、金融機関は預金者が亡くなったことを知ると、口座を凍結してしまいます。手元に現金がなければ、喪主になった方が立替払いをしてくれると思います。
では、喪主が支払った葬儀費用は、戻ってくるのでしょうか?
遺産分割の際に葬儀費用分は優先してもらえるとお思いの方も多いでしょう。
しかし、実際は異なります。葬儀費用は、亡くなった後に支出した費用ですので、遺産には含まれません。他の相続人が葬儀費用の分担を拒んだ場合、喪主を引受けてくれた方だけが、葬儀費用を負担したことになり、その人に損をさせてしまうのです。
同じようなことは、相続手続や遺品整理にもいえます。相続手続や遺品整理も、一番親しい遺族がやってくれると思います。相続手続や遺品整理のためには、労力もかかりますし、会社を休む必要もあるかもしれません。
それでは、その費用や労力は、遺産分割の際に考慮されるのでしょうか。
こちらも、残念ながら答えはNOです。他の相続人と合意できなければ、それをしてくれた相続人もしなかった相続人も法定相続分に従って相続することになります。
そうなると、一番親しく亡くなった後のことも色々としてくれた相続人だけが、葬儀の費用や手続の手間などを負担している分、他の相続人より実質的な取り分が少なくなってしまうことになってしまいます。
そのような事態を防ぐためには、お世話になる親族の相続分が多くなるような遺言を作成するなど「終活」をきちんとしておくと良いでしょう。