親の死亡後、相続人の1人が財産を使い込んでいたことが発覚した場合の対処法②
- 2016.01.25|相続
前回は、相続人の1人が亡くなった親の預金を引き出しているのを止める方法をお話しました。
では、相続人の一人が勝手に引き出してしまった財産については、遺産分割においてどのように扱われるのでしょうか。
多くのケースでは、遺産分割協議の中で、引き出してしまった預金をどのように扱うか話し合いをすることになります。
ただ、当事者同士では揉めてしまった話合いにならないこともあります。そのような場合、弁護士が代理して協議をしたり、調停を申し立てたりします。
弁護士が入った後は、死亡後に引き出した預金について、預金の取引明細を取り寄せるなどして金額を調べ、相手方に対して、引き出した預金をどのように使ったか質問を出します。その質問に回答してもらえた場合、資金使途を確認に、相続人全員の利益のために使われている分はそのまま認め、個人的に使っていた分は現金が残っていると仮定して遺産分割を進めていくということが多いです。
ただ、誤解されては困るのですが、死亡後の預金引き出しについて遺産分割調停の中で必ず解決できる問題ではありません。
というのも、死亡後に引き出された預金については、遺産分割の対象ではないからです。
裁判所で行う遺産分割の対象は、死亡時に存在し、かつ分割時にも存在する遺産のみです。
死亡後に引き出された預金は、確かに死亡時には遺産でした。しかし、分割する時点では既に引き出されていて存在しないので、遺産分割の対象にはならないのです。
東京家庭裁判所では、死亡に引き出された預金については、3回くらいは協議してみようというルールになっています。逆にいうと、3回程度で引き出した預金の扱いについて話合いがまとまらないのであれば、遺産分割調停ではなく、他で解決してくださいということなのです。
他で解決というのは、普通の訴訟で解決するということになります。もし、預金引き出し分について返還して欲しいのであれば、相続人の一人が使い込んだ預金について、本来は自分の相続がするはずの預金なので返還して欲しいという訴訟を提起しなければならないのです。
訴訟提起をするのは、当然返してほしい側です。また、引き出した預金を個人的に使ったということは、最終的には返して欲しい側で立証する責任を負います。
死亡後に引き出した現金は葬儀費用などにも充てられていることが多いです。葬儀ではお布施や心づけなど領収書がでないお金も多く、個人的に使ったということを立証することはなかなか難しいのが実情です。
身もふたもない話ですが、一番の対策は相続人の一人が預金を使い込まないようにしておくことなのです。
親の財産を相続人の一人が管理しているのであれば、生前から管理状況をきちんと聞いておくこと。
それができないのであれば、親が亡くなったら早い時期に遺産目録を出してもらう。
そして、遺産目録をなかなか出してくれないのであれば、自分で早めに動くこと。金融機関に対して連絡するなど、なるべく早く預金の凍結をしてしまうのです。
もちろん、もめそうな時には、依頼するかはさておき、早めに弁護士に相談して対応を聞いておくということが一番のおすすめです。
法律事務所アルシエンでは遺産分割紛争を多く取り扱っています。
親の死亡後に相続人の1人が財産を使い込んでしまっている場合、是非、私たちにご相談してみてください。