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親に会わせてもらえず、亡くなったあとも相続の話が出てこない

事例概要

父親の緑川健志さんが亡くなり、相続人は長男の久則さん、次男の真次さんの二人です。
長男と真次さんは2年ほど前までは仲が良く、父親も交えて食事をするなどもしていました。しかし父親が要介護認定された頃から、真次さんが父親に会いに行こうとすると、兄は父の具合が悪いなどの理由を付けて会うことを拒否するようになりました。
父が亡くなる前に入院した際も、真次さんがお見舞いに行くときには必ず兄が同席をし、兄の同席なしで真次さんと父親が二人きりで会いたいと言うと拒否されました。
父親が亡くなり相続の話が出てくるかと思いましたが、兄からは一向に相続の話は出ませんでした。
真次さんは業を煮やして兄に対して相続の話を切り出しましたが、兄は「介護と治療で父親の預金はない。だから相続手続は必要ない」の一点張りです。
確かに父親は借家住まいだったので不動産は持っていませんが、ある程度の預金はあったように思います。
本当に父には遺産がないのか、長男が遺産を1人占めしようとしているのでないかと心配です。

親に会わせてもらえず、亡くなったあとも相続の話が出てこない

解決までの流れ

それまで仲が良かった兄弟が親の病気や介護をきっかけに、仲が悪くなってしまうというケースはよくあります。その際、親の面倒をみていた兄弟が、遺産を開示しないということも多く見られます。
このような場合は、遺産は真次さんの側で調査をする必要があります。

まずは、預金があるであろう金融機関に行き、父親が亡くなったことを伝え預金があるかどうか照会します。金融機関は預金者が死亡していることを知ると預金口座を凍結してくれます。これにより、それ以後に勝手に引出されるということは防ぐことができます。
そして、口座があるまたは以前はあったという場合、取引履歴をもらいます。
取引履歴をみると、2年ほど前に父の口座から多額の出金がありました。そのような出費の必要性などないだろうとのことだったので、金融機関に対してその日の父名義の振込がないか照会したところ、振込伝票の写しが残っており、その金額が長男に送金されていたことが判明しました。
そこで、長男に対して、生前贈与が真次さんの遺留分を侵害していると主張していくこととなりました。

本件のポイント

生前贈与による遺留分侵害

遺留分侵害は遺言によるものだけではありません。
生前贈与によって相続人の遺留分が侵害された場合にも、遺留分侵害となり得ます。
特に、遺留分権利者に損害を与えることを知って行った贈与については、何年経っても遺留分減殺の対象になります。そのようなルールがなければ、特定の人に生前贈与をし尽くしてしまうことができてしまい、遺留分という制度が骨抜きになってしまいます。

預金凍結について

金融機関が預金者が死亡していることを認識すると、預金口座が凍結され引出すことはできなくなります。
勘違いしている方も多いのですが、金融機関が自主的に死亡情報を収集して自動的に凍結をしているわけではありません(このような金融機関もあるかもしれませんが)。通常は、親族から相続が発生した事実を聞いて凍結を始めることになります。
逆にいうと、金融機関に相続が発生した事実を伝えないと凍結が始まらないことになります。
中には、親が死亡した後にキャッシュカードと暗証番号を使ってこつこつと毎日預金を引出し、気が付いたときには1円もなくなっているということもあります。
相続財産を管理していない場合、早期に凍結をしてもらうということが重要です。

金融機関に対する調査

預金があることが分かれば、まずは取引履歴を発行してもらいます。取引履歴をみると他の財産の有無なども分かってきます。
たまに、介護状態の最中でそのようなお金を使うはずがないのに、まとまった金額が一気に引出されていることもあります。
その日の振込伝票を銀行に照会すると、保管期間内であれば書類が出てくることもあります。それによって、親族に対する贈与が判明したというケースもあります。
その引出し分が親族に振り込まれていることを立証する責任は請求する側にありますので、粘り強く調査をすることが重要です。

遺産の調査についてもう少し詳しく知りたいという方は、是非、こちらもご参考ください。
相続人の一人が遺産を管理していて遺産目録を開示してくれない①
相続人の一人が遺産を管理していて遺産目録を開示してくれない②
相続人の一人が遺産を管理していて遺産目録を開示してくれない③

※上記事例は、受任した事案をもとに再構成をし、個人のお名前や詳細等にフィクションを含みます。
弊事務所では、法令に定めのある場合を除き、受任した事案をご本人の承諾なく開示をすることは一切ございません。

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