音信不通の兄弟から親の遺産の遺留分を請求される
事例概要
父親の赤石徹さんが亡くなり、相続人は長男の信彦さん、長女の晶子さんの二人です。長男は、徹さんの生前から徹さんに迷惑ばかりかけており、ここ数年は全く音信不通でした。入院をした際にもお見舞いにも来ず、葬儀にすら顔を出しませんでした。
徹さんは、長男には遺産はあげたくないと思い、自筆証書遺言で「全ての財産は晶子に相続させる」と記載していました。徹さんが亡くなり、晶子さんは遺言にしたがって自宅不動産の名義変更をしようと思いましたが、家庭裁判所に対して「検認」という申立てをしなければ名義変更ができないということを知りました。
検認を申立てると全ての相続人に対して連絡が行きます。裁判所で行われた検認の場には信彦さんも来ました。信彦さんは、全ての財産は晶子に相続させるという遺言を見て、「オレにも相続分があるはずだ」と言ってきました。
生前から音信不通で、葬儀にも顔を出さないような子でも相続分はあるのでしょうか。
解決までの流れ
まず、子が相続人になる場合には遺留分という最低限相続できる権利が認められています。生前から音信不通で葬儀にも顔を出していないような子であっても、遺留分は失われません。
したがって、信彦さんが遺留分を主張すれば、遺産の4分の1について信彦さんと精算することになります。
こちらが争う姿勢をみせたり感情的な対応をとったりすると、相手も感情的になってしまいます。そうすると相手も、「必ず遺産の4分の1相当の金額を払ってもらわないと納得しない!」と態度が硬直化する可能性が高くなります。また、信彦さんから自宅不動産に対する仮処分などが来てしまう可能性もあります。
晶子さん側からすれば、感情としては山ほど言いたいことはあるでしょうが、こうした場合はぐっとこらえて冷静に話し合い、少しでも有利になるように交渉をすることが良いのです。
本件では、最初から信彦さんに遺留分があるということを前提に、晶子さんが苦労した点や今後の生活状況を説明し、自宅は無事に晶子さんのものとすることができました。預金は全遺産からすると4分の1もなかったのですが、信彦さんには預金を相続してもらうことで納得していただけました。
弁護士は法的に争うだけでなく、法的に争えない場合にどのように交渉を進めて行くか冷静に考えることも仕事なのです。
本件のポイント
遺留分について
遺留分があるか否かは、生前に連絡を取っていたかなどの事情では左右されません。
相続人として廃除されたり、相続人としての欠格事由があれば遺留分もなくなりますが(欠格の場合、代襲相続人の遺留分は認められます)、極めてハードルは高くあまり用いられていません。
遺留分を巡る争いは感情的になりやすいですが、感情を抑えて譲歩をしてもらうように交渉した方が依頼者にとって良い結果になることもしばしばです。
生前の遺留分対策
徹さんが亡くなる前でしたら遺留分対策は可能です。
典型的な対策は、生命保険を用いた対策です。生命保険は受取人固有の財産になるので遺留分対策として使えます。
ただ、生命保険による対策も度が過ぎると遺留分の対象になってしまいますので、事前に専門家に相談することが重要です。
遺留分についてもう少し詳しく知りたいという方は、是非、こちらもご参考ください。
・私は1円ももらえないの? ~遺留分について①
・私は1円ももらえないの? ~遺留分について②
・遺留分について③ 遺留分についての補足説明
※上記事例は、受任した事案をもとに再構成をし、個人のお名前や詳細等にフィクションを含みます。
弊事務所では、法令に定めのある場合を除き、受任した事案をご本人の承諾なく開示をすることは一切ございません。
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