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父の死亡後に遺言書を発見した

事例概要

父親の白岩幸司さんが亡くなり、相続人は長男の孝之さん、長女の幸枝さんの二人です。
長男の孝之さんは父の生前から「遺言を書いてある。私の遺産は長男である孝之に全てあげるつもりだ」と聞かされていました。
父が亡くなったあと、父の引出しを探すと「遺言」と書かれた封筒を見付けました。
封がされていたので開けてみようと思いましたが、何かで封に入った遺言は開けてはいけないと書いてあったのをふと思い出し、弁護士に相談をすることにしました。

父の死亡後に遺言書を発見した

解決までの流れ

封をされている遺言は、勝手には開けてはいけません。家庭裁判所の「検認」という手続をしないと開封することができないのです。
また、封がされていない遺言であってもそのままでは執行ができません。やはり「検認」という手続をして初めて執行ができるようになります。
検認を申立てるには、家庭裁判所に対して全ての相続人について戸籍を提出する必要があります。そのためには、お父様が生まれてから亡くなるまでの戸籍を全て集める必要があります。人によっては明治時代の戸籍から集めなければいけないなんてこともあります。
検認申立てをすると全ての相続人に対して、お知らせが届きます。

今回、幸枝さんも検認手続に来ました。
孝之さん、幸枝さん同席の下、遺言を開封しましたが、内容は孝之さんが相続したとおり全ての遺産は孝之さんに相続させるというものでした。
遺言の内容を知った幸枝さんは「遺言は孝之さんが無理矢理書かせたのではないか。父親がこのような不公平な内容の遺言を自ら書くはずがない」などと憤っていました。
遺言には執行者の指定がありませんでしたので、孝之さんは別途遺言執行者選任申立てという手続をすることになりました。
たとえ全ての財産を長男に相続させる旨の遺言があっても、幸枝さんには最低限相続する権利(遺留分)として相続財産の4分の1を取得する権利があります。
今後は、孝之さんと幸枝さんとの間で遺留分をどのように分配していくか協議を開始することになります。

本件のポイント

検認の申立て

封をされた自筆証書遺言は、勝手に開封することができません。勝手に開封すると5万円以下の過料の支払を命じられる可能性があります。
さらに、自筆証書遺言は検認を受けないと執行をすることができません。
そのため、自筆証書遺言を発見した場合にはまず検認を申立てることになります。申立ては、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行います。
検認を申立てる際には、
①遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
②相続人全員の戸籍謄本
③遺言者の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
を添付する必要があります。
手続自体は簡単なものですが、戸籍取得の煩雑さを考え、弁護士に依頼するというのも一つの方法です。
後述しますが、検認後、遺言執行者選任申立てや遺留分に関する交渉などもあり得ます。その場合、最初から弁護士に依頼してしておいた方が結果的に費用が低く抑えられます。

遺言執行者選任の申立て

遺言に執行者の指定があればよいのですが、自筆証書の場合、遺言執行者の選任がされていないこともあります。
そのような場合、遺言執行者選任の申立てという手続をする必要があります。

遺留分の交渉

自筆証書遺言によって遺留分が侵害されている場合、検認の場が険悪なムードになることも度々です。
とは言え、もともと仲が悪いのでもない限り、遺留分があることを説明しなるべく話し合いで解決するようにもっていくことが通常です。
もともと相続人間の仲が悪く様々な事情が絡む場合には、調停など第三者が介在する形での解決となることも多くあります。

検認についてもう少し詳しく知りたいという方は、是非、こちらもご参考ください。
遺言は勝手に開封しちゃダメ? ~検認について①
遺言は勝手に開封しちゃダメ? ~検認について②

※上記事例は、受任した事案をもとに再構成をし、個人のお名前や詳細等にフィクションを含みます。
弊事務所では、法令に定めのある場合を除き、受任した事案をご本人の承諾なく開示をすることは一切ございません。

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