はじめての相続
相続とは
相続とは、亡くなった方の財産を誰かに引き継ぐことをいいます。
誰しも、生きた時間の中で何かしらの財産を残しています。それが、価値のある財産であるか価値がないむしろマイナスの財産であるかはさておき、財産が全くないということはありえません。
あなたが残した財産は、あなたが亡くなったあと、たとえ財産が少なくても誰かが引き継ぐことになるのです。
相続人、被相続人
亡くなった人のことを「被相続人」といいます。そして、その財産を引き継ぐ人を「相続人」と呼びます。
相続手続
<相続手続の流れ>
死亡届
被相続人の死亡を知ってから、まず市区町村へ「7日」以内に死亡届を提出する必要があります。
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相続放棄/単純承認
「3か月」以内に遺産の相続をするかしないかを決定し、もし相続を放棄したい場合、裁判所に対してその旨申し立てる必要があります。相続するか判断をするには、「遺言の有無の確認」「相続人の確認」「遺産の概要の把握」などを行う必要があり、時間的にはとってもタイトです。3か月では判断ができないよという場合には、3か月以内に家庭裁判所に対して考える期間を延ばして欲しいと申立てることも可能です。
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準確定申告
被相続人が確定申告する必要がある方の場合、「4か月」以内に、準確定申告として亡くなった日の直近の4月から亡くなるまでの間の確定申告をする必要があります。準確定申告をするためには、その方の所得や支出した経費を把握していなければなりません。
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相続税の申告
相続税の申告が必要な方は10か月以内に「相続税の申告と納付」をする必要があります。平成27年から相続税が増税となったことから、今後は相続税の申告が必要なケースもだいぶ増えることが予想されます。
このように相続手続には、時間制限があります。しかし、遺産分割協議をするのに時間制限はありません。
親族の誰かが亡くなると、悲しみの中、残された者が慌ただしく手続きに追われます。
エンディングノートなどを用いて、財産や借金を整理しておくと、遺族は財産の調査がしやすいので便利です。
法定相続
●法定相続人
誰に財産を引き継ぐ権利が認められるのか法定相続人の範囲は民法で決められています。
●配偶者……「夫、妻」
被相続人に配偶者(夫または妻)が存命の場合、常に配偶者が相続人になります。
残念ながら、現在のところ、内縁の妻など事実婚の場合には、相続権がありません。事実婚の相手に財産を残す場合には、遺言を書いておく必要があります。
●第1順位の相続人……「子ども(直系卑属)」
被相続人に子ども(「直系卑属」)がいる場合、子どもが「第1順位の相続人」になります。配偶者が存命であれば、配偶者(存命の場合)と子どもが相続します。配偶者が既にいなければ子どもだけが相続します。
また、子どもが先に亡くなっていた場合、孫(直系卑属)がいれば、孫が相続人になります。子も孫も亡くなっている場合に、ひ孫がいれば、ひ孫が相続人になります。これを「代襲相続」と言います。養子縁組の場合も実子と同様、相続人になります。
婚外子であっても、被相続人の子供であることには変わりないので相続人になります。
勘違いしている方が多いのですが、離婚した前の配偶者との子で、子が前の配偶者の戸籍に入っているときでもその子も相続人になります。子であるかどうかは、戸籍で判断するのではありません。他方、再婚した相手の連れ子は、一緒に住んでいても養子縁組をしていない限り、法律上の相続権法定相続人にはなりません。
●第2順位の相続人……「父母、祖父母(直系尊属)」
被相続人に子どもも孫もいない場合、父母が生きていれば父母が「第2順位の相続人」になります。
父母が先に亡くなっていても、祖父・祖母が生きていれば、祖父・祖母が相続人になります。
父母は第2順位の相続人ですので、第1順位の相続人がいないときだけ相続人になります。
●第3順位の相続人……兄弟姉妹
被相続人に第1順位の相続人である子どもや孫、また第2順位の相続人の両親も祖父も祖母もいない場合、兄弟姉妹が「第3順位の相続人」になります。
被相続人の配偶者が存命の場合は、必ず相続人になりますので、この場合には配偶者と兄弟が相続人になります。また、兄弟姉妹が先に亡くなっている場合には、その子供である甥姪が相続人になります。
相続の割合
民法では、相続人だけでなく、各相続人が相続する割合も決められています。この割合のことを「法定相続分」と言います。法定相続分は、どのような相続人がいるかによって変わってきます。
●配偶者がいない場合
相続発生時に配偶者がいない場合、同一順位の相続人が等分に相続します。
配偶者が亡くなっていて子どもが3人いれば、各人3分の1ずつです。子どもが亡くなっていたら、その人の子ども、つまり孫が代襲相続します。孫は子の分を孫の人数で割ったのが1人分です(子どもがいない場合は後述します)。ある兄弟には子ども(被相続人から見て孫)がたくさんいるからと言って、法定相続分が増えるということはありません。
●配偶者がいる場合
配偶者の相続分は、相続が起こったときに、配偶者以外の相続人が誰になるかによって、配偶者の相続分は変わります。
①配偶者と子が相続人の場合
配偶者が2分の1を相続し、残りの2分の1を子どもが等分する。
②配偶者と親が相続人の場合
配偶者は3分の2を相続し、残りの3分の1を父母で等分する。
③配偶者と兄弟が相続人の場合
配偶者は4分の3を相続し、残りの4分の1を兄弟で相続する。
●相続人が誰もいない場合
相続人が誰もいない場合は、特別縁故者(内縁の妻や療養・看護に努めた人)から申立てがあれば、一定の財産が分与されます。残りは国の財産(国庫帰属)になってしまいます。
特別縁故者に対する財産分与の申立てを行うには、まず相続財産管理人を選任してもらう必要があります。
相続財産管理人選任の申立て
相続人が誰もいない場合、被相続人の財産を管理・処分する人(相続財産管理人)を選任してもらう必要があります。これには、親族や債権者が家庭裁判所に申立てをする必要があります。
法律事務所アルシエンでは、相続財産管理人選任申立て業務も行っております。
特別縁故者に対する財産分与の申立て
特別縁故者が遺産から財産分与を受けるには、家庭裁判所に対して特別縁故者に対する財産分与の申立てをする必要があります。この手続は、相続財産管理人が選任されていることが前提となるので、財産分与を受けたい縁故者は、まず相続財産管理人選任申立てをする必要があります。
法律事務所アルシエンでは、特別縁故者に対する財産分与も申立て業務も行っております。
遺留分
最低限相続できる権利を「遺留分」といいます。
この遺留分は、配偶者や子、親が相続人になる場合に認められます。しかし、被相続人の兄弟姉妹や甥姪が相続人になる場合には認められていません。
●遺留分の範囲
①父親や祖父母だけが相続人の場合は、法定相続分の3分の1を最低限相続できる。
②それ以外の場合は全体で法定相続分の2分の1を最低限相続することができる。
もし、「全ての遺産は長男が相続する」というような遺言があったとしても、次男は遺留分を請求することは可能です。これを遺留分減殺請求権の行使と言います。
きちんと遺留分を支払ってほしいという通知は、自分の遺留分を侵害された遺言があることを知っていたから1年以内にする必要があります。遺留分請求の通知は、あとあと通知なんて来ていないと言われてしまわないように、通内容証明郵便で出すので通常です。
まずは、当事者で遺留分をどうするか話し合いますが、当事者間で話がつかない場合には、調停や訴訟により解決することになります。
法律事務所アルシエンでは、遺留分減殺請求業務も行っております。
生前贈与
相続税の節税対策として生前に親族に贈与することもできます。
●暦年贈与課税制度
1年間(1月1日から12月31日まで)に個人から贈与を受けた財産の合計額が110万円までの場合、贈与税はかかりません。110万円を超える場合に、その超える部分の価額に対して贈与税がかかることになります。
なお、生活費や教育費として通常必要と認められるもので、必要なときに直接これらに充てるものについては、贈与税はかかりません。
●相続時精算課税
一定の贈与について、贈与税を支払うのではなく、相続時に精算できる制度があります。
この制度を選択した場合には、60歳以上の親から20歳以上の子への贈与について、累計で2500万円までは贈与税がかかりません。
2500万円を超える部分については、一律20%の税率で贈与税がかかります。
贈与者ごとに暦年課税か相続時精算課税かを選択できますが、いったん相続時精算課税制度を選択すると、同じ贈与者からの贈与については暦年課税を使えなくなってしまいます。
●活用例
①マイホーム購入資金など子どもが必要なときに多額の生前贈与を受けたい場合。
②自社株を後継者に承継させたい場合。
③賃貸物件の贈与により、家賃収入を子に移転させたい場合など。
●生前贈与をするときの注意点
生前贈与をするときには、贈与の証拠を残した方がよいです。
贈与契約の作成や贈与登記なども法律事務所アルシエンにご相談ください。
相続放棄
相続は、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産、借金も相続してしまいます。遺産が借金の方が多い場合、相続はしたくないと考えるかと思います。
そのような場合「相続放棄」をすれば、一切相続をしなくなるので借金を引き継がなくてよくなります。
この相続放棄という手続をするには、相続発生を知ってから(通常は、亡くなったことを知ってから)3か月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申述という手続をとる必要があります。
「遺産分割協議で遺産を放棄した」「相続をしないと遺産分割協議で言った」などと言う方もいますが、現実は、遺産分割協議でいくら「相続放棄をする」と言っても、実際は相続放棄にはなりません。
ちなみに「相続放棄」の申請前や申請後に、被相続人の車の名義変更や、高額医療費の還付などの申請をして受給すると、「単純承認」をしたことになり、相続放棄ができなくなってしまう可能性があります。オーナー社長が亡くなって、社内の人から「新たな取締役の選任をするので、株主総会議事録に捺印してください」と言われても捺印してはいけません。株主の議決権行使は「単純承認」にあたり、相続放棄できなくなる可能性があります。
遺産に多額の債務があると分かった時点、「何をして、何をしてはいけないか」、弁護士に相談することをお勧めします。
この相続放棄手続や相続放棄をする場合に、「何をして、何をしてはいけないか」というアドバイスも法律事務所アルシエンでは行っていますので、お気軽にご相談ください。